wzmx’s diary

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シンの響き

 前にきちんと怪獣映画を劇場で観たのは、もういつのことだったでしょう。直近で観たのは、確か『サウンド・オブ・ナントカ』といったような響きのタイトルでした。原作のストーリーが好きだったので、大喜びで観に行ったのに、映画の出来は微妙でした。まるで作り物だった。

 

 『シン・ゴジラ』は、「2016年に観ることが出来る映画の中で最も素晴らしい映画」でした。これは決して、すべての映画の中で『シン・ゴジラ』が最も優れていると言いたいのではなく、「すべての映画の中で最も2016年に観ることに意義がある映画」だと感じたからこう言うのです。きっと僕が10年、20年後に『シン・ゴジラ』を観返したら、「ああ、あの頃は確かに、"2016年"だったんだ」と、今日の日の時代の印象を強烈に思い出すだろう。

 まあ、正直今すごい興奮してますんで、「全部の映画の中で一番よかった!」って、うっかり言っちゃいそうな状態なんですけどね。

 

 既にネット上ではさんざん言われていることですが、政治絡み、法律絡みのくだりが非常に生々しい。気持ち悪いくらいです。リアルとかいう次元じゃなかった。

 政治と『シン・ゴジラ』と言えば、一部のシーンで、何らかの市民団体(環境保護団体?)を連想させる描写があるとかで、プロパガンダみたいで嫌だったという声があるようでしたが、該当すると思われるシーンはごく一瞬ですし、具体的に特定の団体を示そうとするような描写は無いので、安心して観てよいものと思います。

  この映画は、もっとも注目されるべきファクターであるゴジラ、そしてそれに対抗しようとする特定の人間の営み、こういった重要な要素以外のものに、極力注意をそらされないよう、丁寧に作られています。そしてそれ故に、名作です。

 もしも『シン・ゴジラ』をみて、そういった思想誘導のような意図を感じてしまうとすれば、それは特定のイデオロギーが込められているからだと言うより、この映画がただひたすらに生々しく、シンに迫っているからそう錯覚したんだと言うほうがシン実でしょう。どのイデオロギーも特定の現実、あるいはそう見えるものから生え出るものだと思うので。

 

 ゴジラそのものの造形ですが、とても良いですよね。人間の目玉の標本をそのまんま載っけたかのような不気味な目つき、奥に血のような色の見える皮膚の皺(アトピー持ちにはキツいビジュアルだった…)など、結構生理的に嫌悪感を感じさせる要素が集まってるんですが、ベースになってるデザイン(体躯のシルエットやゴリラっぽい筋肉の感じ等)は、馴染み深い地球の動物の温かさをも感じさせるのが良い。彼は決して宇宙人ではなく、同じ地球の仲間なんですよね。勘弁してくれ。

 

 リアルでも嘘でもない、遠い真実の響きを感じるような印象の映画でした。

 

 ラストのカット、よかったですね。短かったのできちんと観察できなかったのが悔やまれる…。あれって、やっぱり人間に似せてるんですかね?